震災支援タイトル

一般社団法人 東京都医療社会事業協会  No.45   2017.3.9

災害支援ニュース
つたえる
心をつたえる…様子をつたえる…事実をつたえる…手立てをつたえる…気持ちを伝える

 今月の11日にて、東日本大震災から6年となります。お亡くなりになられた方々に改めて心から御冥福をお祈り致します。そして、被災された全ての方々に真の復興を遂げることが出来るよう、協会としても務めさせて頂きます。


[1] 災害支援の経験を、今の、そしてこれからの業務に活かす

武山ゆかり(豊島区医師会)
 昨年末、ある報道機関の取材を受けました。年明けに「阪神・東日本」と続く、大震災を教訓にする特集番組を作成のために住民の声を聴きたいとの意向です。
 災害を受けた地域に、住む家を確保し、戻ることが出来なかった過去の災害から学び、発災後の仮設住宅の建設の場所や運営をどのようにしたらよいのか、どこにどのような仮設住宅やみなし仮設を設置するのか、などを考えるきっかけにしたいとの企画内容でした。 住民のホンネから「被災地から安全な遠方へ」「仮設住宅から、復興住宅へ」という流れ等について、都市災害の不安や選択に至る気持ちなど、リアルに捉えたいとのことでした。
 確かに、行政の発行する災害時の対策は、避難所の指定先一覧や対応窓口の羅列など、具体的なイメージではなく、「一応決めていますよ」という感が否めません。障害対応の部署や呼吸器等電源などの必要な方への対応こそ個別性を明らかにして細かい計画づくりをしていますが、それも「いざ!」という時に、誰がそばに来てくれるのかは、家族以外は明記出来ない程度の計画です。「自力で避難所まで」が難しい人は、自宅で不安に耐えることしかできないのでしょうか。
 「地域包括ケア」が住み続けられる街や関係づくりを住民同士で、とうたっていますが、日中は高齢者ばかりだったり、逆に夜間は、どこに誰が住んでいるのかわからない「繁華街」だったりと、いざという時の「要配慮者支援」の体制は、まだ作られていませんし、先のことを考えると、2025年には要配慮者ばかりの街も少なくないでしょう。
 都市部では、多くの「避難所」が小中学校施設であったりしますが、バリアフリーで免震構造の新しい建築や設備の大学や企業は、避難所運営にすぐ取り掛かることの出来る人材もいる場所としても、活用は出来ないのでしょうか?「協定」を結ぶことで可能な備えはできませんか?帰宅困難者と住民をいつまでも分けて考えていては、想定外の災害対策は不十分であると思われます。医療・介護が地域を包括して考えているなら、災害においても「地域包括の視点」で、住民・企業・学校・交通機関、そして医療が、行政を介して合同して計画を立てていくことが必要と思われます。行政や医療と通信事業がまず繋がり、命の拠点が確保され、インフラ、水や食料の確保に企業が協力する順番も大切でしょう。
 こうした取り組みの中で、地域づくりや社会貢献、コンプライアンス順守など、開かれた組織や行政などが創られていくのではないかと考えます。
 そんなに上手くはいかないと言われるかもしれませんが、これから来る高齢化社会は多くの手助けを若い人にも求めなければならないことが予測されています。「高齢化」は、他人事ですが「災害」は、我が事であり、想定外も考えておかねばならない、しがみつかれたり、奪われたりも有り得ることを想像する訓練は、手助けの必要とする人が周りに多くいる時代を想定する想像力も育てます。地域限定なら、その中で、その時、自分が何が出来るか、自社が何を果たさなければいけないか、どのような助けが得られるか、考えておくことや、知っておくことは、決して無駄なことではないと言えるでしょう。その時、何を信じて行動すればいいかということさえ、今は曖昧であやふやではないですか?
 今、地域では「顔の見える関係」を作り、年を取り、認知症になっても住み続けられる街づくりをしようとしています。ゴミ屋敷や朽ち果てる空き家が、近隣の脅威にならないために、虐待をうける子どもや高齢者が、隣の部屋で命を落とすことが無いように、と助け合う関係づくりをめざしています。
 これまで「地域」を繋いでいた公的承認・助成・支援などを受けた組織「町内会」「団地自治会」「マンション管理組合」も組織率低下や役員のなり手不足で存続が危うい状況です。「消防団」も中高年主婦が活躍する状況になり、地域の助け手は住民のみでは難しい時代になってきています。また、居住する家族の内、若い人が地域とかかわりを持つことも少なくなっています。古臭いしがらみや干渉には付き合いきれない感覚も理解できます。
 地域に新しい形や目的を持つアクションを起こし「無関心」や「束縛回避」の側にいた人々を「我が事」の活動に引き込むことが、地域にとっての急務であると考えます。その繋ぎ手となるのが、地域で生きる若い人々=医療・介護・福祉・行政の関係者、そして学生たちであると思います。
 かつて、大きな災害を受けた地域何ヶ所かで、ボランティアとして働きました。どこでも、気力を失った住民に元気を与えたのは、若い人たちの笑顔とエネルギーでした。「そんなのダメだよ~」と言いながら、手を出し始め、知恵をつけて、若者の思いつきやつめの甘い企画を、実になる形や力にしていく中で、住民自身が復興に歩みだした被災地での経験を、今活かせないかと考えています。大学のキャンパスの都心回帰も始まっていますし、企業ビル街の中に教室や、各種学校、通信高校の教室があったり、語学教室や塾があったりと、若者集団とその教育スタッフも多くいます。また企業では社会貢献や、地域をビジネスチャンスや人材確保、広報のターゲットとして位置付けるのもトレンドとしてきています。地域で新しい展開を考える、様々なリノベーションの実践例が、情報工学等の研究集団の協力を受けて生まれ、災害医療とIT、SNSを使った支援の研究も進化中です。
 私たちMSWも、重い社会状況、悲壮感漂う2025年問題、火の車の病院経営論など閉塞状態に動けずにいては、ますます希望を失っていきます。単身者が病気になっても、たくさんの支援者が手伝い、短期で家に戻れる、すぐに元気になれる地域で働けたら、もっと仕事は楽しいでしょう。後退する行政を明るく動かしてくれる地域の力があれば、怪しげな「福祉」産業に依頼することも、進出を許すこともないでしょう。  行政が「地域包括ケア」に力を入れている今だからこそ、在宅や、医療・介護の連携を進め、相談窓口、連携センターなどを作ろうとしている今だからこそ、そういう地域づくりに私たちのコーディネート能力も活かせ、進められるのではないでしょうか。
 退院して「家」に帰すときに「もし、大災害が起こったら、この方は生き延びられるか?」と常に思いながら仕事をしてきました。「誰がすぐに傍に飛んできてくれるか、避難に付き添ってくれるか、薬は?食事は?トイレは?」具体的な支援を用意でき、安心を確保してこそ、きちんとした私たちの「仕事」だと考えています。
2017.01.17

 

[2] 大規模災害対策講演会を開催します

14:00~
第1部:関東のMSW協会による意見交換会
「そのときあなたはどう動くか」「広域でどう助け合うか」
~各県MSW協会の防災・減災対策の取り組みを聞き考える~
15:30~
第2部:講演「一人ひとりを支える仕組み 新しい災害復興法を」
~災害ケースマネジメントを提唱する~
講師:弁護士 津久井 進 氏
(芦屋西宮市民法律事務所・兵庫県申請復興研究センター共同代表)

日時:2017326日(日)140017001330受け付け)
会場:東京芸術劇場 シンフォニースペース(JR池袋駅西口より徒歩2分)
参加費無料、事前申込み不要

 3月26日(日)、池袋の東京芸術劇場にて「大規模災害対策講演会」を開催します。当日は2部構成で、第1部は関東のMSW協会による情報交換会。関東圏のMSW協会に呼びかけを行ったのは、2012年11月3日に開催した「関東ブロック震災シンポジウム~つながろう医療ソーシャルワーカー」、2013年9月の震災支援講演会に次いで3回目となります。
関東において大規模災害が発生した場合に備え、MSW協会間にてどのように対応し、協働を図ることが出来るか、共に考える機会にしたいと思います。
「普段からやっていないことは災害の時は出来ない」昨年3月12日の福島県のシンポジウムにおける現地の支援者の言葉です。
だからこそ、この平常時の段階で出来ることを増やしてゆきたい、その想いで今回の集まりを企画しています。
第2部は講演会。弁護士の津久井 進先生を講師としてお招きしています。
津久井先生は弁護士の立場で災害支援にご尽力されており、「一人一人が大事にされる新 たな災害復興法」を提唱されています。今回、私達MSWの活動に大きく共鳴する「災害ケースマネジメント」についてお話しをして頂きます。
当日は一人でも多くの方々の参加をお待ちしております。

                 津久井 進先生の著作

 

[3] 避難指示区域外避難者の住宅問題について

  3月末の住宅助成打ち切りまで残り1ヶ月の状況となってしまいました。自治体によっては独自の施策を打ち出ししているところもありますが、避難されている方々の多くが不安を抱えたままの状況となっています。
 それに対し、全国各所で支援者や当事者団体による運動や集会が展開されています。
 1月21日に、宇都宮けんじ氏主催の「希望のまち東京をつくる会」によるフォーラム「原発事故避難者に住まいと安心を」が文京区民センターにて開催されました。会場には多くの支援者や当事者の方々が参加されました。
 フォーラムには当事者の方々も登壇されました。「家族構成などで都営住宅の優先枠から外れてしまうこと」「国家公務員宿舎や雇用促進住宅など、これまでの住居に住み続けるには高い家賃が発生し、経済的に更に困窮してしまうこと」「今後のことを考える余裕や準備する余裕も無く、選択が迫られていること」「5年も暮らしているのに気持ちが落ち着かない」「子ども達が、また転校しなくてはならない。今のところにやっと落ち着いたのに…」「誰にも相談出来ない」等、多くの方々が様々な複雑な事情を抱え、窮地に立たされています。
 震災及び原発事故にとって大きなものを喪失し、喪失体験を得ながら、様々な負担を抱えながらの6年間、その6年間、避難先にて築いたもの(生活や人間関係など)をもう一度喪失しなければならない事態に陥ります。
 同じ場所で生活を続けること、それは生きてゆく上で守るべき尊厳であり、大切な基本的権利です。今回の住宅助成打ち切りの問題は、区域外避難された方々だけの問題ではありません。
 兵庫県の神戸市・西宮市において、阪神淡路大震災から18年を経過した2013年に、「仮上げ復興住宅」に入居者に対し、退去を求める施策が唐突的に進められました。入居されている方々は、震災後に18年の歳月をかけて、やっとの思いで生活を築き上げてきた状況であり、当然ながらその生活を失うわけにはいかず、入居継続を希望されてきました。しかし、2016年に入り、神戸市と西宮市は入居継続を希望される方々を提訴するという状況になってしまいました。
 阪神淡路大震災や熊本大地震などの災害全般における現行の法制度や施策の限界、そして被災された方々に対し、長期的な視点で支えてゆかなければならない全人的な真の復興、それは私達全員に関わってゆく大切な問題であり大きな課題です。
 3月末をもって、住宅助成が終了となってしまいますが、4月以降、更なる課題が一人一人の方々に圧し掛かってゆきます。その課題の中には経済面や健康問題など、私達医療ソーシャルワーカーが支援に携わってゆかなければならない問題も含まれます。
 なお、東京都としての対応策として、2月22日に最新の情報が発表されています。詳細に関しては東京都のホームページを御参照ください。
 現状の課題や住宅問題に関して、今後も見守ってゆく必要があります。

 「ルポ母子避難―消されゆく原発事故被害者」吉田 千亜 著 岩波書店 2016年
 避難された方々の現状に関して、当事者に寄り添いながら詳細に取材されています。

 

[] 災害支援対策委員会報告

 第59回を1月20日(金)19時、第60回を2月16日(木)19時より、都協会事務局にて開催しました。  「大規模災害対策研修」を中心に、3月発行予定の「別冊つたえる2号」、「災害対策関連」「2017年度の活動」等の協議・検討、そして様々な報告や課題などの意見交換を行っています。
 次回は3月6日(月)19時より、都協会事務局にて開催予定です。参加してみませんか。

「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての経験、意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せ頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
ご寄稿下さる方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。
過去のバックナンバーは当協会のホームページにて閲覧可能です。

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