震災支援タイトル

一般社団法人 東京都医療社会事業協会  No.51  2018.5.21

災害支援ニュース
つたえる
心をつたえる…様子をつたえる…事実をつたえる…手立てをつたえる…気持ちを伝える

 先月で、熊本地震から2年となります。
 被災された方々には心からお見舞い申し上げます。亡くなられた方々の御冥福を深くお祈り申し上げます。
 震災から2年経った今もなお、約3万8千人の方々が仮設住宅などで避難生活を余儀なくされています。
 そして避難生活の長期化などに起因する震災関連死として200名以上の方々が認定され、70名以上の方々が現在もなお審査待ちの状況となっています。
 1月26日に、熊本県医療ソーシャルワーカー協会の土肥会長に講演会を行って頂きました。地震発生以降、個人として、病院職員として、職能団体の会長として、いかに過酷な状況であったか、改めて伺い知る機会となったこと、そして都協会として今後への取り組みをより強固にしていかなければならないことを実感しました。
 そして今後に向けて、引き続き協会全体で取り組みを推し進めていかなければなりません。
 何卒よろしくお願い致します。

加藤 淳(災害支援対策委員会委員長 牧田総合病院)

 

[1]災害研修・講演会 「『想定外』だった当事者としての体験を語る」
開催報告

 開催日:2017年1月26日(金)
 会場:福祉財団ビル大会議室
 講師:土肥 尚浩 氏(熊本県医療ソーシャルワーカー協会会長 城南病院)

石井 貴弥(介護老人保健施設 練馬ゆめの木)
 去る、平成30年1月26日に「『想定外』だった当事者としての体験を語る」と題して、熊本県医療ソーシャルワーカー協会会長 土肥 尚浩氏を講師に迎え、福祉財団ビル大会議室にて災害研修が行われました。講演会の数日前は大雪になるなど、開催に不安もありましたが、当日にはすっかり路面の雪も解け、寒さは厳しいものの晴天に恵まれました。
 会員16名、非会員5名の合計21名の方々が参加され、経験年数が5年以上の方がその半数以上を占め、経験年数の長い方々の関心が高かった研修となりました。また、当日行いましたアンケートの満足度も100%となるなど、関心の高い生の声を東京でお聞きすることのできる貴重な機会だったと思われます。

 講演の内容ですが、熊本地震の概要をお伝えいただいたのち、生活者としての視線、病院職員としての視線、協会員としての視点、熊本県医療ソーシャルワーカー協会会長としての視点と4つの視点に分けて、当時を振り返る構成でした。
 地震発生当日の業務終了後の土肥会長の日常生活が垣間見える話から始まり、和やかな笑顔もでる内容でスタートしたものの、地震発生時の様子になると、スクリーンに映し出される写真は先ほどまでのものと全く様子が変わり、地震の激しさに笑顔などなくなってしまうものでした。地震発生後にとられた土肥会長の行動に対しても、ご自身で正しい行動と、振り返ると正しいとは言えない行動(夜間状況把握できないときの移動等)など、その時の感情も振り返りながらのお話は当事者でなければ語ることのできないものでした。後になってわかった前震、本震という言葉の通り、二度の大きな揺れに襲われ、前震後の様子、本震後の様子を1枚づつ画像に収められていたものを丁寧に説明してもらい、ニュースで見るだけの様子よりも、自身の生活や病院という職場がどのようになるのかといった自分自身にも直結する視点で見ることができるものでした。

 後半は、主に病院職員として行った対応や、協会としての動きを中心に語られ、その中には実際にどのくらいの期間でライフラインが回復したのか、震災後の生活で困ったこと、具体的には水の備蓄方法についてもふたができるものは良いが、風呂やトイレのタンクに水を貯めておいても地震の揺れでこぼれ出て備蓄にならないことなど、想像しがたい細かなことまでお伝えいただきました。
 最後は協会として行った避難所での活動やそこで感じたこと、東京で起こった場合を想定して熊本と東京の比較から見えること、それに伴いどのような対応をしておくことが良いのかなどの問題提議もいただき、この研修をもとに準備をしておかなくてはならないこと、準備のできることを再確認する機会にもなる話で終了されました。
 今回の研修では、まずは自分の身の安全を整えること、必ず助けはあるのであきらめないこと、マニュアルや前例は役に立つとは限らず臨機応変に対応できる柔軟な思考をもつこと、SNSの活用など情報収集に徹すること、そして最後には全国から仲間が集まり協力が得られることを教えていただきました。

 もし、東京で地震が起こった場合、どれほど大変になるのかは誰もが想像することですが、それ以上に誰にも想像することのできないほどの災害になることは必至です。いくら準備をしたとしても、それを超えるものとなり、どうしてよいかなどだれも正しい答えを導き出すことはできないでしょう。しかし、被害を最小限にとどめるために準備をしておくことは可能ですし、みなさんそれぞれの職場で実際に対策も行われています。土肥会長の最後の言葉でも準備に勝るものはないと話されており、いかにいろいろな可能性を検討し、連携のとれる体制を構築しておくかが問われた内容でもあったと感じました。すべての課題を解決することはできませんが、目の前で起こるであろうことに対して日々検討し、今のうちにできることを行っておかなくてはならないと再度考える貴重な時間でした。
  一昨年度は大規模災害対策講演会と題し、関東近県の協会の取り組みについてシンポジウム形式も交えての研修でしたが、昨年度はぜひ当事者の声を聞きたい、関心はあるものの熊本まで伺うことが時間的に難しいという点から、多くのソーシャルワーカーが研修に参加できるように東京で生の声を聞くことはできないか、という声から熊本県医療ソーシャルワーカー協会の土肥会長に打診したところ快諾いただき実現致しました。とても気さくに接していただき、お忙しい中東京までお越しいただきました土肥会長に感謝申し上げますとともに、この貴重なお話をいただきました時間を無駄にしないように対策を検討していければと思います。

【参加者の感想より】
①講演会について
スライドの写真もリアリティがあり、また時系列でスケジュールが説明されていて、リアルな思いになりました。知ることよりも知って実践することが重要という言葉が、日々のソーシャルワーク業務に通ずるように思いました。またゴール設定し、引き際について支援開始時から考えていくことも、日々の仕事と共通しているように思いました。災害時にも冷静にSWとして、どう活動し、役割を果たせるかを日々通常業務からも考えて行動していきたいと思いました。
・備えをどうするか、わかりやすかった。
・県協会としての備えを、どう実践していくかを再認識しました。各協会での取り組み等での情報共有をできればと思いました。
・災害に備えること、そして知ること、それを実践することが大切であるということを改めて学ぶ機会となり良かった。
・リアルに語って頂けたことが良かった。きれいごとではなく、事実としてが良かったです。
・大変わかりやすい話で、気づきがたくさんありました。
・熊本震災について、被災者とSWそれぞれの視点でお話しして頂き、とても勉強になったからです。ご自身も被災されている中で、SWとして自分が何が出来て何をすべきかということを、考えて行動されていた土肥さんのお話を聞いて、自分が同じ状況になったとき、どうするのかなと考えるきっかけになりました。震災のときSWの力というのはすごく発揮できる場面が多いのかなと思います。状況を把握してアセスメントするちからだったり、地域との連携だったり、多職種との協働であったり、日頃のSW業務がとても活かされるのではないかと思いました。私はSWとしての経験が浅いですが、日頃より考えて行動する訓練をしていけたらと思いました。
・熊本県で生まれ育ちましたので、地元のことを少しでも知ろうと思い、参加させていただきました。年に2回程、地元へ帰るに際に、益城にも立ち寄りますが、まだブルーシートもあり、胸が痛みます。今回お話しを伺い、東京での震災が起きた時のことを置き換えて、考えていかなければと改めて痛感しました。MSWとして何が出来るのか、考えるきっかけとなりました。
・支援された方で、支援者としての立場の方のお話を始めて伺うことができた。災害支援に携わりたいと考えているが、知るだけでなく何が出来るのか、考えていけたらと考えることが出来た。
・個人、職業人、協会それぞれの視点で話をしてくれて、わかりやすかった。地域によって震災被害は異なり、これから東京都としてどう対応していくのか考えていくことが、震災対策への第一歩と感じた。東京はたくさんの病院等あるため、情報が錯綜すると思うが、正しい情報をタイムリーにどう集めていくのか、当院の情報を逆にどう発信するのかも課題と感じた。支援者も生活者であり、被災者であるから、自分がどこまで支援に力を注ぐことが出来るのか不安でもある。
・被災者の1人、HP職員の1人、MSW協会の1人、それぞれの立ち位置から経験したことを分かりやすくお話しをいただいて、実際被災した時どうするかと想像しやすくなった。そのため、これから何をしなくてはと思うように普段から考えていきたい。
・災害拠点HPの活動に繋げたいと思います。
・当時の所属医療機関での業務が、具体的に理解出来た。ありがとうございました。

②災害時に都協会に求めること
・情報の集約と発信
・情報の共有を(災害時に)機能させることができるのか
・関東地域での連携を図れることが出来るような体制づくりをお願いします
・知る→実践の繰り返し
・東京都という人口過密地域における、地域情報の管理をしていただけると良いと思う。
・現地支援員としての派遣体制
・災害時の被災地の情報提供(協力要請情報等)
・情報共有の方法(被災した時に、他状況を知るためのもの)

 

[2] 「MSWと災害を語る夕べ」について

小菅英樹(若木原病院)

 「MSWと災害を語る夕べ」は平成30年2月23日(金)、大塚にある福祉財団ビルの一室で夜7時より行われました。大きなテーブルを9名のMSWが囲んで座り、それぞれ災害について語り合いました。
 語る夕べに際して、ルールは一つ。
 「発言した内容について、他の参加者は批判や否定をしてはいけない」 というものでした。
  災害について言葉にするのは、勇気のいる事でなかなか表に出すことがためらわれる事だと考えられる場合があるためです。それぞれが心にあるものを言葉にして、他の人がそれを受け止める。
  そうした安心して話せる雰囲気を作るための工夫でした。それ以外については、特に決まりごとはなく自由に語り合いました。

  また、非常食も用意しました。
  事務局でストックしている消費期限の近い乾パン。缶詰めにされた食パン。

水を入れると発熱剤が温まって調理ができるカレーライスや鳥五目御飯。
  ① 非常食セット    ② 発熱溶剤を袋に入れて ③ 袋の中で料理を温める

水を入れて作るあんこ餅。
  ① あんこ餅   ②お餅を水に浸して  ③あんの粉をかけて完成! などです。

 非常食について多少知識はあるものの実際に調理をしたり食べたりした事はないため、体験するという目的と、話しやすい雰囲気を作る意味も含めて、みんなで賑やかに調理したり食したりしながら語り合いました。

 実際に語り合った中で出たのは、震災復興のボランティアに行ったときの話や、震災にあった方の話、それに震災の時に必要な対策などでした。
 それぞれが経験された事を語り、実際に震災をほとんど経験していない自分としては、聞いて一生懸命想像するばかりでした。
 その中で心に残った2つの言葉がありました。
 それは震災に遭った方が語った言葉です。(参加者の方が聞いた言葉です)

 一つ目は
 「自分よりも辛い想いをしている人がいるのに、自分が辛い気持ちを出してはいけない」 と口を閉ざしていたという言葉でした。
 そうした経験のない私には正直想像の付かなかった言葉でした。自分も日常的に同じように考えることはあります。けれど、自分とは比較にならない想いをされてきた方がその言葉を口にするときどんな気持ちだったのか。
 想像力の乏しい私にはそうした想いをしっかりと理解する事はできないかも知れません。
 だからこそ、少しでも理解しようとする気持ちを持つことが必要なのではないかと感じました。

 また二つ目は
 「とにかく関心を持ってもらうことがありがたい」
という言葉でした。
 「愛の反対は無関心」とアメリカのユダヤ人作家 エリ・ヴィーゼルさんと言う方が語っていますが(マザーテレサが語ったという話もあります)、まず関心を持って関わるという事が一番大切な事なのかとハッとしました。
 自分には何ができるのだろうか。
 何をしたらよいのだろうか。
 災害支援対策委員となって、いまだハッキリとしたものが見えていない私にとっては
 「関心を持つ事」
 それが大事なことなのだと教えてもらいました。
 会は終始なごやかな雰囲気で行われ、時間もかなりオーバーしてしまいましたがそれぞれに何か気付きを得られる会だったと思います。夜間にご参加いただいた方々にはお礼を申し上げたいと思います。
 なかなか得難い経験ができますので、関心を持った方は次回是非いらしてください。

 

[3] 3月に宮城県訪問を行いました

 3月17日(土)~18日(日)にかけて、宮城県訪問と宮城県MSW協会の方々との交流会を行いました。2011年11月に始まり、第6回目の開催となります。
 詳細な報告に関しては、次号の「つたえる」と「東京MSW」にて掲載致します。

 

[4] 第38回日本医療社会事業学会にて活動報告を行います

 6月16日(土)香川県「サンポート高松」にて開催される第38回日本医療社会事業学会において、災害支援対策委員会として発表を行います。
 分科会2にて、演題名は「災害支援対策委員会の意義と課題 ~発足から7年目を経て~」です。当委員会として発表するのは今年で7回目となります。


災害の制度・仕組みを理解する②

台風・集中豪雨の水害対策」の情報を事前に確認しよう
小林 直毅(災害支援対策委員会 副委員長)

 平成26年(2014年)8月豪雨による広島土砂災害、平成27年9月関東・東北豪雨の鬼怒川の決壊、平成28年台風による水害は、皆様の記憶に新しいと思います。
  近年、集中豪雨やゲリラ豪雨により、いつ自分がいる地域が浸水、土砂災害などの災害に遭うという可能性がだれにでもある状況といえます。これからの梅雨・台風の時期の前に自分の地域についてどのような危険があるのかハザードマップ等の確認を行うことも防災・減災につながります。ハザードマップは、各自治体のホームページで確認することができます。
  また、ゲリラ豪雨等の際には、降雨量や河川水位情報や注意報・警報・特別警報を自ら入手し、備えるもしくは避難準備を行うことも防災・減災につながります。

情報の入手する方法としては、
〇東京都水防災総合情報システム(建設局河川部提供)
  http://www.kasen-suibo.metro.tokyo.jp/im/tsim0101g.html
〇気象庁のホームページ http://www.jma.go.jp/jma/index.html
〇各自治体の防災情報
があげられます。

 是非この機会に、居住地、勤務地、通勤・通学の地域の情報について確かめ、今すぐ始められる防災・減災活動のきっかけの一つになればと願っています。ひとり一人の行動によって、守れる命、助けられる命があると思います



 「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての経験、意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せ頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
 ご寄稿下さる方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。
 過去のバックナンバーは当協会のホームページにて閲覧可能です。

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