2021.06.15
つたえる 2021.06.15 No.58
[1]災害支援対策委員会発足から10年を経て
災害支援対策委員会 委員長 加藤 淳(牧田総合病院)
東京都医療社会事業協会の災害支援対策委員会は、2011年の東日本大震災を契機に発足しました。
発足当初は「震災支援対策委員会」として活動、2016年4月に現在の「災害支援対策委員会」に名称を変更しました。
常に「東京都の医療ソーシャルワーカー団体として出来ること」を念頭に、模索しながらも活動を継続しています。委員会も定期的に開催し、今月の6月25日には99回目の委員会を実施します。
今年は東日本大震災発生から10年、熊本地震発生から5年となります。それは「節目」ではなく、まだ過程に過ぎません。
被災された方々への支援、そして今後も起こりえる大規模災害に対しての対応策を常に検討していかなければなりません。
コロナ禍の厳しい状況が続いていますが、今後も試行錯誤を重ねながら、活動を継続していきます。
[2]「災害支援活動報告 別冊つたえる第3号」のお知らせ
会員の方々には3月のお知らせにてお伝えしましたが、2021年4月に別冊つたえる3号が完成致しました。
第1号(2013年6月発行)、第2号(2017年3月)に引き続いての3号目となります。
今回の3号は、より多くの方々の目にふれること、今後の状況によってアップデートが可能に出来るよう、データとして協会のホームページに掲載と致しました。
現状も続く災害支援、そして今後も常に起こりえる大規模災害に対して、医療ソーシャルワーカーの視点を念頭に作成しました。
今回の3号の特色として、第1章は東京都医療社会事業協会の災害支援対策の活動とその内容について説明しています。
災害支援活動報告と併せて、第2章は「過去の経験から学ぶ」というテーマとして過去9年間に発行した災害支援ニュース「つたえる」や「東京MSW」から抜粋し、テーマ別にまとめています。これまでに関わられてきた会員や他県のMSWを含む多くの支援者や関係者、そして当事者の方々から得た、10年間の貴重な経験と知見の蓄積です。
この10年間に、復興・復旧を遂げた部分もあれば、逆に復興がまだまだ進まない部分もあります。
特に「心の復興」に関しては、まだ十分に遂げていないと、これまでの活動から強く実感しています。
今後も、災害支援、対策活動を検討し、推し進めていかなければなりません。
この「つたえる第3号」が今後の活動や備えの一助になれば幸いです。
東京都医療社会事業協会ホームページ「災害支援対策」のコーナーに掲載しています
https://tokyo-msw.com/top_links/shinsai/index.html
[全体の概要]
【第1部】東京都医療社会事業協会の災害支援活動について
第1章 都協会災害支援対策委員会の活動について
①災害支援対策委員会 ②広報関係 ③災害時支援 ④研修活動 ⑤ソーシャルアクション関連 ⑥避難者支援関連 ⑦東京都や他団体との協働・連携 ⑧その他他団体活動
第2章 都協会の災害時対策(災害への備え)
①災害時行動ガイドライン・マニュアル ②災害支援情報掲示板
③災害関連制度情報ストック「みんなで学ぼう!災害制度」 ④サテライトオフィス契約
⑤災害時情報共有システム ⑥都協会ベスト ⑦大規模災害訓練
【第2部】MSW自身の初期始動からの動きと備え
第1章 MSWが作る『災害に備えて』
①MSW自身の初期始動からの動きと備え
②災害時要配慮者を抱える方と当事者に対して
③協会会員としての災害時対応~災害時行動マニュアル・ガイドライン、災害時連絡シート・受入依頼シート、都協会ホームページの活用について(災害支援情報掲示板、災害関連情報ストック「みんなで学ぼう!災害制度」)、都協会サテライトオフィス、派遣支援
④災害関連情報の入手先(収集先)について
⑤災害に関連する(基本的な)諸制度
⑥国からの通達事項
第2章 過去の経験から学ぶ
①災害発生~災害直後 ②避難所生活 ③広域避難 ④被災者を取り巻く状況
⑤支援者(MSW)を取り巻く状況~支援者としての在り方 災害とMSW
⑥災害により発生する様々な問題 ⑦災害への備え
【第3部】活動報告(2016年4月~2021年3月)
第1章 各地の災害と都協会
①熊本地震(2016年4月14日) ②各地の災害 ③令和元年台風19号
④新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大
第2章 広域避難者支援
①広域避難者大交流会参加 ②広域避難者支援ネットワークin東京参加
③電話相談「医療と福祉110番」「医療と暮らしのホットライン」
④生活協同組合パルシステム東京「子どもの甲状腺検診」参加
第3章 他団体連携
①関東MSW協会との連携と災害ケースマネジメント
②東京都災害福祉広域支援ネットワーク
第4章 研修・勉強会
①宮城県MSW協会との交流会とフィールドワーク
②災害と支援についての振り返り・報告会
③災害支援ワークショップHUG(避難所運営ゲーム)研修 ④災害支援研修
第5章 災害時対策
第6章 東京都への要望
第7章 学会発表
【巻末資料】
活動概要(2011年~2016年3月31日)
非常災害時対応マニュアル(2014年10月策定)、災害時派遣支援登録シート(2017年)
災害時行動ガイドライン・規約(2018年10月1日施行)
[3]その他トピックス
(1)被災者生活再建支援法の改正について(2020年12月4日施行)
自然災害による被災世帯への支援金に関して、被害の程度区分によって、受けることが出来る支援内容が大きく変わります。例えば過去には、「大規模半壊」か「半壊」によって、支給を受けることが出来るか出来ないかの大きな隔たりがありました。
そのような現状から、2020年12月の「被災者生活再建支援法」の改正に伴い、「中規模半壊」が追加されました。2020年7月3日以後に発生した自然災害(令和2年7月豪雨を含む)より適用されます。
この改正により、支援を受けることが出来る被災世帯の対象が拡大されます。
しかし、被害区分による支給内容の細分化には大きな課題が残されています。被災者一人一人に合わせた支援、「災害ケースマネジメント」が重要だからです。今後も注視が必要となります。
text
(2)災害対策基本法等の一部改正について(2021年5月20日施行)
「災害時における円滑かつ迅速な避難の確保」や「災害対策の実施体制の強化」のため、災害対策基本法や災害救助法などの法律の一部が改正されました。
主な改正内容は「避難勧告・避難指示の一本化等」「個別避難計画の作成」「災害発生のおそれ段階での国の災害対策本部の設置及び広域避難に係る居住者等の受入れに関する規定の措置等」(以上、災害対策基本法)、「災害が発生するおそれが段階での災害救助法の適用」(災害救助法)などです。
【避難勧告・避難指示の一本化について】
従来では「避難勧告」「避難指示」と段階が分かれていましたが、「避難勧告」という指示では避難すべきタイミングが理解しにくく、逃げ遅れによる被災が多数発生しました。
そのような現状から「避難勧告・避難指示」を「避難指示」として一本化されることになりました。
poster
日本では毎年のように豪雨災害が発生しています。自分の命を守るため、「いつ」「どこで」「何をすればよいのか」をそれぞれが意識するために、自宅や勤務先などのハザードマップを確認しながら、警戒レベルやとるべき行動について考えてみてはいかがでしょうか。
また、避難指示の一本化に併せ、「緊急安全確保措置の指示」や「警報の伝達及び警告を行うに当たっての配慮」が明示されています。
「警報の伝達及び警告を行うに当たっての配慮」ですが、高齢者や障害者等の要配慮者に対して、迅速・円滑に避難の確保が図れるよう配慮していかなければならないと明示されています。避難行動要支援者の「個別避難計画」に関連します。自治体のみならず、地域と医療・福祉・保健との協働が今後もより一層、必要とされるのではないでしょうか。
(3)自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律について (2021年6月11日施行)
2021年6月11日、自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律が施行されました。
自然災害義援金の差押禁止に関して、東日本大震災や熊本地震など、災害によっては法律が規定されましたが、平成29年九州北部豪雨や平成30年北海道胆振東部地震などでは規定されず、被災者に交付された義援金が金融機関などに差押えられ、生活再建において大きな支障をきたしていました。
今回の法律の規定により、2021年1月発生した災害に遡り、今後全ての災害に適用されます。
「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての経験、意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せ頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
ご寄稿下さる方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。
過去のバックナンバーは当協会のホームページにて閲覧可能です。
http://www.tokyo-msw.com/top_links/shinsai/tsutaeru/saigai_news.htm
発行 一般社団法人 東京都医療社会事業協会 災害支援対策委員会
〒170-0005
東京都豊島区南大塚3-43-11 福祉財団ビル5F
電話・FAX : 03-5944-8912
災害支援対策委員会 委員長 加藤 淳(牧田総合病院)
東京都医療社会事業協会の災害支援対策委員会は、2011年の東日本大震災を契機に発足しました。
発足当初は「震災支援対策委員会」として活動、2016年4月に現在の「災害支援対策委員会」に名称を変更しました。
常に「東京都の医療ソーシャルワーカー団体として出来ること」を念頭に、模索しながらも活動を継続しています。委員会も定期的に開催し、今月の6月25日には99回目の委員会を実施します。
今年は東日本大震災発生から10年、熊本地震発生から5年となります。それは「節目」ではなく、まだ過程に過ぎません。
被災された方々への支援、そして今後も起こりえる大規模災害に対しての対応策を常に検討していかなければなりません。
コロナ禍の厳しい状況が続いていますが、今後も試行錯誤を重ねながら、活動を継続していきます。
[2]「災害支援活動報告 別冊つたえる第3号」のお知らせ
会員の方々には3月のお知らせにてお伝えしましたが、2021年4月に別冊つたえる3号が完成致しました。
第1号(2013年6月発行)、第2号(2017年3月)に引き続いての3号目となります。
今回の3号は、より多くの方々の目にふれること、今後の状況によってアップデートが可能に出来るよう、データとして協会のホームページに掲載と致しました。
現状も続く災害支援、そして今後も常に起こりえる大規模災害に対して、医療ソーシャルワーカーの視点を念頭に作成しました。
今回の3号の特色として、第1章は東京都医療社会事業協会の災害支援対策の活動とその内容について説明しています。
災害支援活動報告と併せて、第2章は「過去の経験から学ぶ」というテーマとして過去9年間に発行した災害支援ニュース「つたえる」や「東京MSW」から抜粋し、テーマ別にまとめています。これまでに関わられてきた会員や他県のMSWを含む多くの支援者や関係者、そして当事者の方々から得た、10年間の貴重な経験と知見の蓄積です。
この10年間に、復興・復旧を遂げた部分もあれば、逆に復興がまだまだ進まない部分もあります。
特に「心の復興」に関しては、まだ十分に遂げていないと、これまでの活動から強く実感しています。
今後も、災害支援、対策活動を検討し、推し進めていかなければなりません。
この「つたえる第3号」が今後の活動や備えの一助になれば幸いです。
東京都医療社会事業協会ホームページ「災害支援対策」のコーナーに掲載しています
https://tokyo-msw.com/top_links/shinsai/index.html
[全体の概要]
【第1部】東京都医療社会事業協会の災害支援活動について
第1章 都協会災害支援対策委員会の活動について
①災害支援対策委員会 ②広報関係 ③災害時支援 ④研修活動 ⑤ソーシャルアクション関連 ⑥避難者支援関連 ⑦東京都や他団体との協働・連携 ⑧その他他団体活動
第2章 都協会の災害時対策(災害への備え)
①災害時行動ガイドライン・マニュアル ②災害支援情報掲示板
③災害関連制度情報ストック「みんなで学ぼう!災害制度」 ④サテライトオフィス契約
⑤災害時情報共有システム ⑥都協会ベスト ⑦大規模災害訓練
【第2部】MSW自身の初期始動からの動きと備え
第1章 MSWが作る『災害に備えて』
①MSW自身の初期始動からの動きと備え
②災害時要配慮者を抱える方と当事者に対して
③協会会員としての災害時対応~災害時行動マニュアル・ガイドライン、災害時連絡シート・受入依頼シート、都協会ホームページの活用について(災害支援情報掲示板、災害関連情報ストック「みんなで学ぼう!災害制度」)、都協会サテライトオフィス、派遣支援
④災害関連情報の入手先(収集先)について
⑤災害に関連する(基本的な)諸制度
⑥国からの通達事項
第2章 過去の経験から学ぶ
①災害発生~災害直後 ②避難所生活 ③広域避難 ④被災者を取り巻く状況
⑤支援者(MSW)を取り巻く状況~支援者としての在り方 災害とMSW
⑥災害により発生する様々な問題 ⑦災害への備え
【第3部】活動報告(2016年4月~2021年3月)
第1章 各地の災害と都協会
①熊本地震(2016年4月14日) ②各地の災害 ③令和元年台風19号
④新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大
第2章 広域避難者支援
①広域避難者大交流会参加 ②広域避難者支援ネットワークin東京参加
③電話相談「医療と福祉110番」「医療と暮らしのホットライン」
④生活協同組合パルシステム東京「子どもの甲状腺検診」参加
第3章 他団体連携
①関東MSW協会との連携と災害ケースマネジメント
②東京都災害福祉広域支援ネットワーク
第4章 研修・勉強会
①宮城県MSW協会との交流会とフィールドワーク
②災害と支援についての振り返り・報告会
③災害支援ワークショップHUG(避難所運営ゲーム)研修 ④災害支援研修
第5章 災害時対策
第6章 東京都への要望
第7章 学会発表
【巻末資料】
活動概要(2011年~2016年3月31日)
非常災害時対応マニュアル(2014年10月策定)、災害時派遣支援登録シート(2017年)
災害時行動ガイドライン・規約(2018年10月1日施行)
[3]その他トピックス
(1)被災者生活再建支援法の改正について(2020年12月4日施行)
自然災害による被災世帯への支援金に関して、被害の程度区分によって、受けることが出来る支援内容が大きく変わります。例えば過去には、「大規模半壊」か「半壊」によって、支給を受けることが出来るか出来ないかの大きな隔たりがありました。
そのような現状から、2020年12月の「被災者生活再建支援法」の改正に伴い、「中規模半壊」が追加されました。2020年7月3日以後に発生した自然災害(令和2年7月豪雨を含む)より適用されます。
この改正により、支援を受けることが出来る被災世帯の対象が拡大されます。
しかし、被害区分による支給内容の細分化には大きな課題が残されています。被災者一人一人に合わせた支援、「災害ケースマネジメント」が重要だからです。今後も注視が必要となります。
text
(2)災害対策基本法等の一部改正について(2021年5月20日施行)
「災害時における円滑かつ迅速な避難の確保」や「災害対策の実施体制の強化」のため、災害対策基本法や災害救助法などの法律の一部が改正されました。
主な改正内容は「避難勧告・避難指示の一本化等」「個別避難計画の作成」「災害発生のおそれ段階での国の災害対策本部の設置及び広域避難に係る居住者等の受入れに関する規定の措置等」(以上、災害対策基本法)、「災害が発生するおそれが段階での災害救助法の適用」(災害救助法)などです。
【避難勧告・避難指示の一本化について】
従来では「避難勧告」「避難指示」と段階が分かれていましたが、「避難勧告」という指示では避難すべきタイミングが理解しにくく、逃げ遅れによる被災が多数発生しました。
そのような現状から「避難勧告・避難指示」を「避難指示」として一本化されることになりました。
poster
日本では毎年のように豪雨災害が発生しています。自分の命を守るため、「いつ」「どこで」「何をすればよいのか」をそれぞれが意識するために、自宅や勤務先などのハザードマップを確認しながら、警戒レベルやとるべき行動について考えてみてはいかがでしょうか。
また、避難指示の一本化に併せ、「緊急安全確保措置の指示」や「警報の伝達及び警告を行うに当たっての配慮」が明示されています。
「警報の伝達及び警告を行うに当たっての配慮」ですが、高齢者や障害者等の要配慮者に対して、迅速・円滑に避難の確保が図れるよう配慮していかなければならないと明示されています。避難行動要支援者の「個別避難計画」に関連します。自治体のみならず、地域と医療・福祉・保健との協働が今後もより一層、必要とされるのではないでしょうか。
(3)自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律について (2021年6月11日施行)
2021年6月11日、自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律が施行されました。
自然災害義援金の差押禁止に関して、東日本大震災や熊本地震など、災害によっては法律が規定されましたが、平成29年九州北部豪雨や平成30年北海道胆振東部地震などでは規定されず、被災者に交付された義援金が金融機関などに差押えられ、生活再建において大きな支障をきたしていました。
今回の法律の規定により、2021年1月発生した災害に遡り、今後全ての災害に適用されます。
「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての経験、意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せ頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
ご寄稿下さる方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。
過去のバックナンバーは当協会のホームページにて閲覧可能です。
http://www.tokyo-msw.com/top_links/shinsai/tsutaeru/saigai_news.htm
発行 一般社団法人 東京都医療社会事業協会 災害支援対策委員会
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