2018.12.26
つたえる 2018.12.26 No.53
[1]災害支援対策ワークショップ① 「振り返り会」の報告
 平成30年8月31日(金)ワークショップ「振り返り会」を開催しました。
 13名が参加し、この7年の間に被災地訪問した方達から話を聞くことができ、スライドを見ながら当時を振り返る時間となりました。
 災害を何かが起きた時に思い出すのではなく、忘れないためにどうしたら良いかを意識しながら、会員の皆さんと活動していきたいと考えています。
 次回は、2月16日(土)に避難所(H)運営(U)ゲーム(G)を開催します。避難者の年齢や性別、国籍に応じた避難所運営が出来るか模擬体験するものです。ゲームを通して、対策や課題について皆で理解を深めていきたいと思っています。
 皆さんぜひ、ご参加ください。

【参加者の感想】

小村 惠子(三宿病院)

 私は東日本大震災時、宮城で被災した経験がある。沿岸部で被災した方々の多くが「被災地に来て実際の光景を見てほしい。忘れないでほしい」と言っていた。会の中で、都協会の方々が震災の年から被災地訪問をしていた活動をスライドで拝見させて頂き、感謝の気持ちでいっぱいになった。
 今回の石巻訪問は参加できなかったが、機会があれば訪問したい。また、このような振り返りの会を開く事によって、初参加の方々が数名いらした事を、とても嬉しく思った。 継続した支援が大切だと改めて感じた会であった。

河野 杏子(三宿病院)

 東日本大震災から7年が経過し、少しずつ当時の記憶、その時抱いていた思いが時間とともに薄れていることを残念ながら感じています。
 しかし、これではいけない。今もなお震災の傷跡で苦しまれている方が多くいらっしゃること、またいつ起こってもおかしくない自然災害への備えが必要であり、今一度大震災を振り返り、自分自身を鼓舞しなくてはという思いで参加しました。
 当時の惨状や自身も被害に遭われながら支援者として活動されたワーカーの皆さんのご様子に胸が詰まるような思いで報告を聞かせていただきました。
 改めてあの時何が起こったのか、そしてこれから私たちには何ができるのか考えるとても貴重な機会をいただきました。ありがとうございました。

picture

[2]災害支援対策ワークショップ② 「皆でHUGしませんか?」
 HUGとは「避難所(H)運営(U)ゲーム(G)」の事で、避難所運営を皆で考えるためのアプローチとして静岡県が開発したものです。
 避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所の体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか、また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験するゲームです。
 日本各地で地震や豪雨による被害が発生し、東京でいつ起きてもおかしくない状況となっています。皆さんは職場、家庭、地域で避難先や避難ルート、安否確認を取り合う方法を確認していますか?
 平常時から意識し備えていくために、HUGを行い、私達が避難者として避難所運営に関わるとしたら・・・、運営や避難生活で私達は何が出来るのか、どのような難しさがあるか、準備が必要かなどゲームを通して、皆で考える時間を持ちたいと思います。

 [開催日時] 2019年2月16日(土)14時~17時
 [開催場所] 都協会事務局(豊島区南大塚3-43-11 福祉財団ビル5階)
 TEL03-5944-8912
 [申込方法] 申し込み用紙をFAXにて都協会事務局に送付
 [定員] ゲームの特性上、10名程度とさせて頂きます。

[3]広域避難者支援ミーティングin東京に参加して
山我 香子(災害支援対策委員会 三宿病院)

 政府が発災から10年を「復興期間」としているため、2020年を境に支援体制が大きく変わり、制度による支援も減るだろうと想定されています。
このような現状を踏まえ、支援体制の変化に支援団体として何が出来るか検討するため、「広域避難者支援ミーティングin東京」が2018年9月4日に日本教育会館にて開催されました。「広域避難者支援ミーティングin東京」は、行政や支援団体、当事者団体が一同に集まり、情報交換や課題の共有、支援の検討を行う会議で、2013年以降、定期的に開催されています。

 プログラム1では広域避難者支援について4名(福島県避難者支援課・栗山氏、中野区社会福祉協議会・伊平氏、NPO法人こどもプロジェクト・福田氏、東京都医療社会事業協会・加藤)から話題提供がありました。
栗山氏:避難者を取り巻く支援の終わりが増えている。要支援者世帯の抱える問題が複雑化しケースが重篤化している。今後は自立を促す支援、困窮者等要配慮世帯に対する支援や地域コミュニティとのつながりに関する支援が必要。
伊平氏:事業が終了しても支援が必要な人を支える体制づくりが必要。避難者が孤立せず安心して生活できるよう関係機関、専門職の協力が不可欠。
「気持ちを聞いてほしい」「同じ避難者と話したい」「まだ前を向けない」など次のステージにいけない、迷っている人がその人らしく参加できる場、意見できる場が求められている。
福田氏:赤坂プリンスホテルに避難し、学校に行けなかった小学生を対象に勉強会開催。 避難所が終わり、都営住宅などに移った後も夏休みの学習支援を行った。その後、月1回中野区などで学習支援やレクリエーション、信州上田への福島の子供達の保養も実施。親が放射能に対する思いを話せる場、健康的な食生活を送るための集いも開催。
加藤委員長:災害によって今の現状があることを忘れてはならない。当たり前の日常を支えるためには、まだ現状ではサポートが弱い。
様々な組織に避難者の現状、課題を理解してもらう必要がある。
時間の経過と共に課題がより複雑化してくるが、避難者一人一人に沿った支援が大切。これは普段の医療ソーシャルワーカーの業務に通じるものである。
  4名の話を参考にプログラム2では、グループに分かれ避難者の方が直面する課題について意見交換会が行われました。
 支援がなくなると頼れる場所を見つけられなくなる、どのように長期的な支援を行えばいいのか、また支援の形が望ましいのか、皆で交流する機会が自治体の枠を越えて広域で考えられないか、縮小でもいいから仕組みは残せないか、事業に付随している様々な仕事(弁護士、保健師への相談など)がなくなることへの不安、弁護士などは、今つながっているうちに関係作りを意識しておくことが大切などの意見があがりました。
支援がなくなったり縮小していく中で、事業を継続するためのヒントを得たい、個の問題ではなく地域で考えなければいけないという想いが伝わるミーティングでした。
またグループ発表のまとめの中で「避難者を中心としたつながりの中で医療ソーシャルワーカーの関わりは大きい。困ったときに相談していきたい」と話してくれたグループがありました。閉会の挨拶でも、ミーティングに医療ソーシャルワーカーが参加し、つなぐ役割を担うこと、避難者や関係機関の関わりの中に専門職として関わっていくことが大切だと話がありました。
 避難者の方にはもちろん、各関係機関に医療ソーシャルワーカーの存在や役割を知ってもらうこと、そして私達が出来ること、やらなくてはいけないことを考え活動しなくてはいけないと感じました。
 最後に、意見交換の中で東京都総務局復興支援対策部の方より「寄り添いホットラインは電話がつながらず避難者が困っている」と話がありました。当協会の「医療と暮らしのほっとライン」のパンフレットをお渡し説明したところ、東京都が月1回発行する広報誌にパンフレットが同封され、約1700枚が避難者システムに登録されている方や応急仮設にいらっしゃる方などに届けられました。実際に「医療と暮らしのほっとライン」に避難者の方から相談も頂いており、今後も当協会の活動が少しでも力になればと思っています。

[4]大規模災害訓練を実施しました
 東京や関東近郊にて大規模災害が発生した時、東京都医療社会事業協会という組織としてどのような対応が求められ、そして備えが必要であるか、災害支援対策委員会を中心に日々検討・協議を行っています。今年度に入ってから理事間の災害時伝達訓練を繰り返し、 10月19日から20日にかけて、委員と理事による大規模災害訓練を実施しました。
 訓練の詳細に関しては、次回の「東京MSW」にて報告致します。
 来年度は理事や委員のみならず、会員全体を巻き込んだ伝達訓練の実施を検討していきたいと考えています。

[5]2018年の主な都協会災害支援対策活動
【1月】
12日:第71回災害支援対策委員会
26日:災害研修「『想定外』だった当事者としての体験を語る」
   講師:土肥 尚浩氏(熊本県医療ソーシャルワーカー協会会長)
29日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク推進委員会参加
【2月】
15日:第72回災害支援対策委員会
23日:振り返り会「MSWと災害を語る夕べ」
【3月】
2日:第73回災害支援対策委員会
5日:災害支援ニュース「つたえる」50号
17日~18日:宮城県訪問と宮城県MSW協会との交流会
3月末:災害福祉広域支援に関して東京都と協定締結
【4月】
14日:災害時伝達訓練
19日:災害時伝達訓練
20日:第74回災害支援対策委員会
【5月】
17日:第75回災害支援対策委員会
21日:災害支援ニュース「つたえる」51号
【6月】
16日:日本医療社会事業学会
   学会発表:「災害支援対策委員会の意義と課題~発足から7年目を経て~」
18日:大阪府北部地震(他団体との連絡・情報共有)
19日:第76回災害支援対策委員会
【7月】
6日:平成30年7月西日本豪雨(他団体との連絡・情報共有)
18日:第77回災害支援対策委員会
【8月】
2日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク推進委員会参加
17日:第78回災害支援対策委員会
22日:災害支援ニュース「つたえる」52号
31日:災害支援ワークショップ「被災地訪問振り返り会」
【9月】
5日:東京都交渉・ヒアリング
6日:北海道胆振地震(他団体との連絡・情報共有)
14日:第79回災害支援対策委員会
9月末:協会事業「医療と福祉ホットライン」の都内避難者全世帯への通知
【10月】
12日:第80回災害支援対策委員会
15日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク推進委員会(施設部会)参加
19日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク推進委員会参加
20日:大規模災害訓練
【11月】
7日:第81回災害支援対策委員会
13日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク伝達訓練参加
20日:東京都災害福祉広域支援ネットワーク図上訓練参加
24日:生活協同組合パルシステム子どもの甲状腺検診事業支援
【12月】
7日:第82回災害支援対策委員会
8日~9日:生活協同組合パルシステム子どもの甲状腺検診事業支援

[6]今後の活動について
①第83回災害支援対策委員会
  2019年1月9日(水)19時実施
②ワークショップ「HUG体験」
  2019年2月16日(土)14時~17時
③災害時ガイドライン
  今年度末、郵送にて全会員に配布予定